-日本の社会起業家-(Social entrepreneurs in Japan)-

 

CACは、2001年度、東京財団の協力を得て、日本の社会起業家事例研究を実施しました。本研究は、日本における社会起業家を定義し、特徴づけることを目的としたものです。主として、社会起業家精神の原動力はどこから来ているのか、地域や社会にどのようなインパクトを与えているのか、行政や企業、他の組織との連携をどのように図っているのか、現在抱えている課題は何か、といった視点から社会起業家20数名にインタビューを実施しました。その概要は、東京財団ワーキングペーパー11として発行します(2002年7月)。
その研究成果の一部を以下に、ワーキングペーパーより抜粋して掲示しています。

「社会起業家は、社会に新たな仕組みと価値観を創出する市民のリーダーである。
身近な課題を主体的に発見し、コミュニティの資源を使い、社会性と事業性を両立させながら問題に取り組み解決策を導く。」

さらに、活動の特徴をキーワードで整理すると、以下の5点に集約される。

■社会起業家の視点−ミクロからマクロへ
■社会起業家の目的−ダブル・ボトムライン
■社会起業家の手段−ビジネスセンス
■社会起業家の組織−ネットワーク型
■社会起業家の創造−ソーシャル・イノベーションへ

社会起業家は、地域あるいは、自分の身近なところにある問題に取り組んでいる。現状に甘んじることなく、また、その現象をあきらめるのではなく、問題がどこにあるのかを認識していた。身近な問題を解決していくことで、社会全体の問題解決へとつないでいる点に特徴が見出された。社会起業家のもつミクロな視点は、マクロな政策へと発展させる可能性をもっているのである。
社会起業家の目的は問題解決であるが、それが達成されたと、どの段階で判断することができるだろうか。社会起業家は、社会的なミッションを達成するために、事業を起こしている場合が多い。その際に、事業と理念の両立を図ることに注力している。社会起業家は、まず、事業を採算に乗せるという成果を上げなければならない。組織の拡大が主目的ではないが、活動が自立していることが重要である。概して、社会を変えるというミッションへの到達は容易ではなく、事業を安定化させることで、ミッションに向かって長期的に取り組んでいる。さらに、理想的には、常にミッションの見直しを行い、ミッションが社会に浸透するよう対外的な働きかけも怠らない。大きなミッション達成に向けて、一歩一歩進む。その亀のような動きをもって、自分たちにとって時の経過は「タートルイヤー」であり、企業のスピードとは異なるというフュージョン長池の富永氏の発言は、彼らの動きを言い表している。社会起業家は、事業の採算ラインと、ミッション達成ラインの目標達成ラインが2段階ある「ダブル・ボトムライン」を特徴としている。
 ビジネスの世界では、商品開発や新規事業立ち上げに、ビジネスプランをたて、市場調査を行い、宣伝広告を打つ。社会起業家は、このようなビジネスの手法を好む。マーケティングや交渉、顧客の設定など、社会的ミッションの達成にも戦略が必要であることを認識しているからである。逆に言えば、営利企業の人々は、社会起業家のスキルを既に習得している社会起業家予備軍と言えよう。もちろん、学生、セールスマン、技術者、経営者、主婦など、社会起業家のキャリアは様々であるが、今後、営利企業が社会性の高い事業展開を重視した場合、その担い手として、社会起業家精神のもった人々が活躍することも考えられる。また、ビジネスマン個人が新しい働き方を模索し見出す時に、社会起業家精神のある取り組みを一つの選択肢として選ぶ可能性も出てくるだろう。
社会起業家は、人とのつながり、組織とのつながりを重視している。ネットワークにより活動を広く展開させ、より良い効果を見出す。ネットワークの一つに、行政や企業との協力関係がある。行政や企業の持つ利点を引き出して、関係を築くことに抵抗がない。もっとも、パートナー選びは慎重に行っており、協働の成否は、相互の信頼関係にあると考えている。さらに、信頼関係は、長い時間と共同作業を通じて築いていくものだという認識を持っている。
社会起業家が生み出すものは、新しい社会システムである。既存の枠組みの中では解決できない社会問題に対して、既存の法律や制度の壁を超え、新たな仕組みを考えるところに特徴がある。市民を巻き込んで活動を進め、その結果、個人に対して、新しい生き方や働き方を提案している。しかしながら、新たな仕組みを構築するための人材と資金源の獲得が課題となる。
以上が事例研究を通じて、導出した社会起業家の特徴である。

社会起業家は、活動を通じて社会的価値と経済的価値を創出することがわかった。彼らの起す事業主体は、株式会社の法人格を取得している場合や、事業型NPOとして存在している場合など様々である。近年、営利企業の中には社会性を意識して、地域への投資を行い、環境報告書を発表するものも増加している。投資家や個人は、社会的責任投資(SRI)を行い、その活動を評価する動きが始まっている。今後企業の社会性が高まり、社会にその概念が浸透するに従って、営利や非営利の枠を超えた組織が登場してくるに違いない。米国では、既に、そのような組織を「ハイブリッド組織」と呼び、注目が高まっている。
さらに、個人のレベルにおいても、社会起業家が活躍する地域で、個人が公共生活やコミュニティの発展に貢献することを促進することにつながることがわかった。同時に、個人の意識の高まりを期待する社会起業家の声を多く聞いた。
従来の市民や企業のフィランソロピー活動、そして多様なNPOに加えて、社会性と事業性を融合させながらミッションを追求していく社会起業家が世界を変えていくことになるであろう。

文責:服部

 

社会的起業家精神をもった人々(エッセー)

 
環境
ユーズ染谷さん 府内エコロジーネット21 アサザ基金 中部リサイクル運動市民の会 環境ネット21
 
教育
ねおす ブレーンヒューマニティ シューレ東京
 
文化芸術
ふらの演劇工房 アートサポートセンター神戸
 
海外協力
シャプラニ−ル
 
福祉
興望館 エイブルアート支援 シンフォニー 釜ヶ崎支援機構 スワンベーカリー ぱれっとを支える会
 
街づくり
フュージョン長池 つくばアーバンガーデニング実行委員会 YOSAKOIソーラン祭り組織委員会
 
インターミディアリー(中間支援)組織
市民フォーラム21 コラボねっと パートナーシップサポートセンター 杉並ベンチャーネットワーク
 

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