民法改正でどう変わる!クレジットカード債権とファクタリング

債権譲渡禁止特約が結ばれていたため従来はファクタリングが不可能とされてきたクレジットカード債権ですが、民法改正によって同特約が無効となりました。今後企業の資金調達はどのように変化していくのでしょうか。

クレジットカード債権のファクタリング

クレジットカード債権を検討している人の手

近年のキャッシュレス化の影響もあり、クレジットカード、スマホ決済による売上の入金が後払いになるケースは格段に増えました。
企業間で「掛け取引」が行われるのと同じように、BtoC取引(飲食業と個人などの取引)に於いてはクレジットカード決済が大多数を占めています。

実は、売掛金とクレジットカードの性質は共通している点があります。
クレジットカードでの支払いは、クレジットカード会社が加盟店に対し立て替え払いをし、後に利用者(ユーザー)に請求する仕組みです。

つまり、クレジットカード売上はクレジットカード会社に対する「債権」ということになりますので、売掛金と同様に譲渡性がある資産と言えます。

民法改正による変化とメリット

「クレジットカード債権」はファクタリング取引に利用すること(第三者への譲渡)はできるのでしょうか。
実は、クレジットカード債権は一般的に「債権譲渡禁止特約」が規約内で定められているため第三者に譲渡することはできませんでした。

なぜ過去形なのかと申しますと、2020年4月1日の民法改正によって“債権譲渡を禁止・制限していたとしても債権譲渡を抑止する効果はないものとする”と記載されたことで、今後は債権譲渡禁止特約そのものが無効となるためです。
したがって、債権譲渡禁止特約は今後設定することができなくなり、クレジットカード債権であっても自由に譲渡することが可能となります。

なお、同時に追加された第3項、第4項では債務者における支払いの権利も保障されており、債権者にも債務者にもメリットがある民法改正となりました。

クレジットカードでの売上をファクタリングのように即時現金として手に入れる手段が利用できるとなれば、飲食店や小売店をはじめとした数多くの業種における資金調達に幅が生まれることは言うまでもありません。
また、クレジットカード債権ファクタリングには以下のメリットもあります。

有事に対応できる

クレジットカード債権は、飲食店の多くが常に有している債権です。
飲食店や小売店などの店舗経営においては、天候・天災・事故・疫病の蔓延等、様々な事柄が客足に影響を及ぼします。
客足が戻る数か月の間、審査不要で利用可能なファクタリングはつなぎ資金として高い効果を発揮することは間違いありません。

負債として計上されない

ファクタリングは債権の譲渡になりますので、借金とは異なり負債が増えることはありません。
経営が苦しい時期に無理な借り入れを行えば、再開した営業活動が安定した後もしばらく苦しい時期が続いてしまいますが、ファクタリングであれば必要な金額を無理なくスマートに用立てることが可能です。

クレジットカード債権の問題点

債権譲渡禁止特約が無効になりクレジットカード会社へ負担がかかるイメージ

クレジットカード債権における入金の時差は、クレジットカード決済が広まった世の中において、多くの飲食店・小売店の悩みのタネでした。

しかし、債権譲渡禁止特約が無効となったことで「今度はクレジットカード会社の負担が大きくなってしまうのでは」と懸念されています。

ファクタリングが行われた場合における業務の煩雑化、それに伴う過払いや誤払いの発生など、ファクタリングが利用された際の負担はクレジットカード会社側の方が圧倒的に大きいと言わざるを得ません。
負担が増したことによって手数料の増加・倒産・サービス低下等を招いてしまっては本末転倒です。

飲食業界の起爆剤となるか

「債権譲渡」に大きな影響を与えた今回の民法改正。
資金調達の幅が広がったため、クレジットカードによる売上が増えていた飲食店・小売店などにとってはメリットの方が大きい改正になったのではないでしょうか。

一方で、クレジットカード会社における負担やミスの発生は軽視できない問題です。
譲渡取引においてどのような影響が見受けられるのか、今後の動向にはアンテナを張っておくようにしましょう。