手形廃止でどう変わる?ファクタリングは代わりの決済手段になるのか

2021年3月・経済産業省で開かれた有識者会議に於いて、今後5年を目途に手形を廃止する方針が決定されました。今まで手形を利用していた企業への影響について、ファクタリングとの違い・比較を交えながら考えてまいります。

手形が遂に廃止!掛取引の今後を考える

ミーティングをする建設会社スタッフ

今やビジネスシーンでは無くてはならない存在とも言える「手形取引」。
1980年代から1990年代に掛けて特に多く利用された決済方法ですが、トラブルが多いこと、現金化までに時間を要することなどから年々取引高が減少しています。

そして遂に、2021年3月に実施された経済産業省・有識者会議に於いて2026年を目途に手形を廃止する方針が決定されました。
手形廃止という衝撃の事態に、今まで利用してきた企業はどのように対応すればよいのか、またビジネスシーンへどのような影響を及ぼすのか等について確認してまいります。

そもそも「手形」とは

手形とは、簡単に言うと債権を証券化したもので、ビジネスシーンで最も多く利用されているのが「約束手形」と呼ばれる種類の手形です。
約束手形とは「○年○月○日までに○○円を支払います。」といったように、名称通りお金を支払うことを約束する手形であり、発行した人を振出人・受け取った人を受取人と言います。

受取人は、受け取った手形を第三者への支払いに充てる又は期日前に換金(手形割引)できますので、約束手形は決済手段の1つとして広く用いられてきました。

手形が抱える問題点
リスクとメリットの文字

手形はあくまでも「支払いを約束する(債権)」ものであり、発行時点で当座預金に残高が無くても振り出すことが可能です。
そのため、支払期日に残高が足りず約束通りの決済がなされない恐れがあり、これを不渡りと呼びます。(6か月の間に2回不渡りがあると銀行取引が停止となるため、事実上の倒産と言えます。)

また、手形の大きな特徴として「譲渡性」が挙げられます。
例えば、A社が10万円の約束手形をB社から受け取った場合、A社はさらに別会社であるC社への支払いに充てることも可能です。

ただしこの場合、仮にB社が不渡りを出した場合は、手形を譲渡したA社が連帯して支払わねばなりません。
これを手形の償還請求権といい、1社が不渡りを出すことによって当該企業が振り出した手形を譲渡した企業(裏書人)も履行不能に陥る恐れがあります。

日本では、1986年から1991年に掛けて「バブル期」と呼ばれる時代がありましたが、この時代では手形取引が一般的に行われていたため、バブル崩壊と共に多くの企業を巻き込む連鎖倒産へと発展してしまいました。

詐欺に利用されるケースも

先般申し上げた通り、約束手形は手元にお金が無くても振り出すことが可能です。
そのため、換金性の高い商品を手形で購入し、計画的に倒産して支払いを免れるという詐欺(所謂「取り込み詐欺」)が横行しました。

また、銀行や消費者金融からの融資が厳しい企業に“手形を買い取る”などと称して手形を発行させ、そのまま金銭を支払わずに姿を消す「パクリ屋」なども、手形詐欺の体表例として挙げられます。
このように、手形は非常に利便性に優れている反面で多くの危険をはらんでいるのです。

手形割引とファクタリングの違い

積み上げられた請求書

手形割引もファクタリングも「債権の売買」に当たりますが、両者はどのように異なるのでしょうか。
両者の違いについて改めて確認していきたいと思います。

ファクタリングは手形の発行が不要

当然ではありますが、手形割引を行うには割引に使用するための手形が必要です。
手形の入手方法として、主に「①自社で手形を振り出す」又は「②受け取った手形を換金する」が考えられますが、手形を発行したことが無い中小企業の場合、①は現実的ではありません。
なぜならば、手形の発行には「当座預金」が必要となるためです。

当座預金とは決済のためだけに使用する口座のことで、手形の他小切手の支払い等にも充てられ、万が一銀行が破綻しても原則として全額が保護されます。
また、普通預金とはことなり1日の取引限度額が無いため、大企業、大手の中小企業にとっては無くてはならない存在と言っても過言ではありません。

ただし、当座預金を開設するには事前に銀行からの厳しい審査を受けねばならず、仮に突破できたとしても開設までに1~2か月を要することがあります。
したがって、そもそも手形を使用できるようになるまでに高いハードルを超えねばならないのです。

ファクタリングはそもそも法人に対する債権さえあれば利用可能であり、当座預金口座が必要ありません。
比較的小規模な企業であればファクタリングの方が手軽に利用でき、スピード面でも優れているといえます。

受取手形の換金について

「②受け取った手形を換金する」場合は手形割引を扱っている金融機関や専門企業に当該手形を持ち込み、手数料を支払った上で現金に換えます。
この際、銀行の場合は1~5%、その他の機関で5~15%が手数料として引かれるため、コスト面で考えるとファクタリングとほぼ同等程度です。

しかし、手形割引とファクタリングには「遡求権の有無」という大きく違いがあります。
手形の裏書人は譲渡人に対して連帯して責任を負うという点については先般申し上げましたが、これは手形割引をしたからといって無くなる訳ではありません。

つまり、手数料を支払って現金に換えたのにもかかわらず、期日に決済がなされなかった場合はさらに手形に記載する金額の債務を履行しなければならなくなる恐れがあるのです。

なお、手形の遡求権は手形法に基づいた権利であり、民法の債権譲渡を根拠にするファクタリングにはそもそもこのような権利はありません。
そのため、万が一譲渡した債権に債務不履行や履行不能があったとしても、売却した企業は責任を負いません。

代替手段としてファクタリングが再注目

まとめますと、手形とファクタリングには以下の通り違いがあります。

手形 ファクタリング
割引手数料又は
ファクタリング手数料
1~15% 2~20%
遡求権
当座預金口座 必要 不要
取引停止処分
売却先 銀行・金融機関 ファクタリング会社
オンライン契約 不可
他社への決済手段 不可

ご覧の通り、換金時の手数料(割引手数料)は手形の方が低いものの、遡求権があること・当座預金口座が必要であることから、リスクやハードルは高いと言えます。
また、手形は書面化されているため、オンラインでの取引には対応しておりません。

ファクタリングは債権の有無や信頼性の調査がメインであり、書類の確認は原本でなくとも遂行できますので、PCやスマートフォンさえあれば取引可能です。
一方で、手形は債券を第三者に引き渡すことができますので、他社への決算手段としては優れているという利点があります。

ファクタリングへの移行がオススメ

握手をかわすビジネスマン

手形が廃止された場合であっても、ほとんどのシーンでファクタリングが代用可能です。
ただし、他社への決済方法に使用している場合、一度ファクタリングにて現金化しなければなりませんので、手順が1つ増えることになります。

そのまま利用したいのであれば「でんさい」という選択肢もあります。
こちらは債権を電子化し、いつ取得したのか・債権額・譲渡先等をコンピューター上で管理するサービスで、第三者への決済や現金化をスムーズに行うことが可能です。

なお、でんさいは銀行のサービスであるため、利用時間には各金融機関によって異なるという点に注意が必要です。

手形と同様、ファクタリングには取引金額に上限がありませんので、数千万円規模の資金調達手段としても用いることができます。
手形の廃止と併せて、資金調達手段・決済方法の1つとしてファクタリングも視野に入れてみてはいかがでしょうか。