国家戦略特区の取り組みを徹底解説!福岡市の事例や従来の特区との違い

地域と分野を限定して規制の緩和や金融支援をする制度、国家戦略特区。地域振興や国際競争力の向上を図っています。大胆な改革を起こしやすく、国・民間の双方にメリットのある制度となっています。

国家戦略特区の概要

国家戦略特区の公式サイト

※当記事は2022年11月11日時点の情報を基に作成しております。

国家戦略特区とは、国家戦略特別区域(こっかせんりゃくとくべつくいき)の略称であり、平成25年度に「国家戦略特別区域法」により制定されました。
安倍内閣が「アベノミクス3本の矢」の3本目の矢として掲げた「民間投資を喚起する成長戦略」のうちのひとつです。

経済・社会情勢が絶えず変化していく中で、長年にわたり「岩盤規制(役所などの反対により緩和が困難な規制)」が改善できておらず、それが日本の経済成長を妨げていると問題視されてきました。
そこで、国が主導となりその規制を打ち破ることで、新たな産業を生みだし経済を活発化させようというのがこの国家戦略特区です。
“世界で一番ビジネスをしやすい環境”を創造し、国際競争力の向上させることを最終目標としています。

国家戦略特区の特徴

国家戦略特区の指定地域と事業数

この制度は、地域と分野を限定し、規制の緩和・免除、金融支援、減税などをすることで地域振興を図るものです。
地域をより絞り込むことで大胆な改革を起こしやすくし、岩盤規制緩和の突破口とする構想です。
国・地方自治体・企業・民間・個人が対等な立場で一緒にプロジェクトを推し進めるため、 地域に根づいた発展が期待できます。
また、国が主導となりスピード感を持って進められる仕組みとなっており、区域ごとの会議で計画を作成した時点で措置が適用されるのが大きな特徴です。

国家戦略特区の内容 指定されている地域
国家戦略特区の内容は、観光・教育・農業など、計11分野(都市再生・創業・外国人材・観光・医療・ 介護・保育・雇用・教育・農林水産業・近未来技術)の92事業 10地区(東京圏・関西圏・新潟市・養父市・福岡市・北九州市・沖縄県・仙北市・仙台市・愛知県・広島県・今治市)が認定されており、400以上の事業が行われている。

福岡市の事例

福岡市のロゴ

福岡市では、国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」として外国人のチャレンジを応援する取り組みを行っています。
現在の法律では日本国内で外国人が事業を行う場合、「経営・管理」の在留資格の取得が必要ですが、かなり厳しい要件を満たしていなければ取得できません。国内の協力者なしに一人で創業することは極めて困難といえます。

そこで福岡市では国家戦略特区として外国人の創業活動を促進するため、 『スタートアップビザ』の受付を開始しました。それにより、在留資格の取得要件を満たす見込みのある外国人の創業活動が6か月間特例的に認められることとなりました。
※平成31年1月からは全国制度として開始した新スタートアップビザにより、在留期間が最長1年となり、「留学」等から在留資格の変更が可能です。

福岡市ではそのほかにも、人材確保・育成へ向けて人材流動化センターを設置するなど、さまざまな分野で特区法が制定されています。

参考福岡市公式HP―国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」
https://www.city.fukuoka.lg.jp/soki/kikaku/fukuoka_tokku_top.html

他の特区との違いとそれぞれの特徴

内閣では、国家戦略特区の発足以前にも、規制改革のニーズを実現すべく、構造改革特区・総合特区という区域を措置してきました。
それらの制度との大きな違いは、国家戦略特区では国が主導して行うという点です。
3つの制度は特徴が異なりますが、一体的に提案を募集するなどして連携運用しています。
それぞれの特区の詳細は以下のとおりです。

構造改革特区 ・地域からの提案により国の規制を緩和し、できなかった事業化を特例で可能にする。
・認定された規制改革事項は、全国どの地域でも活用できる。
総合特区 ・2つの特区に分かれており、「国際戦略総合特区」では経済成長の原動力となる産業を、
「地域活性化総合特区」では地域活性化への取り組みをサポートする。
・規制・制度の緩和に加え、税制・財政・金融上の支援といった総合的な支援をする。
国家戦略特区 ・地域と分野を限定し、さまざまな規制の緩和や免除、金融支援、減税などをすることで、
地域振興・国際競争力の向上を図る。
・地方から国に提案する従来の特区とは違い、国が主導する。

国家戦略特区制度のプロセス

国家戦略特区のプロセス

国家戦略特区は、「特例措置の創設」と「個別の事業認定」の二つのプロセスがあります。
「特例措置の創設」は岩盤規制を打破する措置を実現する行程で、提案は誰でも行うことができ、随時募集を行っています。
「個別の事業認定」は、実現した措置を実行していく行程で、自治体が実際に措置を活用し、課題解決につなげます。
実現した特例措置は、関係省庁と連携し積極的に全国展開を進めていきます。

まとめと今後の課題

国家戦略特区として地域を限定することで、いままでできなかった大胆な改革がしやすくなることは、政権にとって大きな利点です。
国が主導となるので財政面でも余裕を持って計画を遂行できるうえ、民間を巻き込んだ改革でより地域に根ざした発展が期待できます。
民間側、つまりその地域に暮らす個人個人にとっても多くのメリットがあるといえます。

しかし、事案実行後の評価指標が不足していることや、多くの事業が実現する一方で、計画倒れになると税金が無駄になってしまうという点は課題であり、議論が続けられています。
規制改革事項の提案は誰でも行うことができるので、まずはこの記事をきっかけに国家戦略特区の取り組みに興味をもってみてはいかがでしょうか。