年々増加傾向にある“サテライトオフィス”の魅力にせまる!

サテライトオフィスの設立は、コストや通勤時間の削減など従業員・企業ともに様々なメリットが得られます。しかし、労働人口が減っている昨今、人材の確保には変わらず苦労するといえます。

サテライトオフィスが増加中

ノートパソコンで働く女性

働き方改革の取り組みで最近よく聞かれる「都会から離れて自然豊かな地方で働く」というスタイル。
個人が地方に移住して起業するほか、都市部に本社を持つ企業が地方にオフィスを構える「サテライトオフィス」と呼ばれるサブ事務所を設立するケースも多くなっています。

総務省の調査によればここ5年間でその数が約6倍に増加しているという結果が出ており、地方U・Iターン希望者の雇用の受け皿、増え続ける空き家の活用、若者の地元の定着などさまざまなメリットが生まれることから注目を集めているのです。
そこで今回は、サテライトオフィスの基本知識について解説します。

サテライトオフィスとは?

サテライトオフィスとは、本社から離れた場所に構えたオフィスのことを指します。
本社を中心として、衛星(サテライト)のように存在するため“サテライトオフィス”と呼ばれるようになりました。

サテライトオフィスには従業員が遠隔で仕事ができるよう、通信環境が整えられていることがほとんどです。
よく“支社”と混同されがちですが、支社の場合は各地域でマーケットの拡大を視野に入れた設備を整えており、本社と同様の業務を行います。

一方、マーケットの規模を小さくし、必要最低限の業務を担うのがサテライトオフィスです。
また、サテライトオフィスには3つの種類がありそれぞれ特徴があります。

人口の少ない田舎に設立する「地方型」

地方型は、主に人口の少ない田舎にオフィスを設立します。
元々仕事があまりない地方での新たな雇用を促進し、都心に通えない優秀な人材を獲得したり、自然に囲まれた環境でリフレッシュしながら仕事をしたりすることが目的です。
地方自治体によっては積極的に企業のサテライトオフィス誘致活動を行っているところもあります。

従業員の通勤負担を減らす「郊外型」

郊外型はベッドタウンにあたる郊外にサテライトオフィスを設立します。
都市部へ通勤しなくてもよいので満員電車の回避や通勤時間の短縮ができるのが特徴です。
そのため、子育て・介護を行っている従業員が仕事と両立がしやすくなるというメリットが見込めます。

販路確保&情報収集を増やす「都市型」

都市型は、都心に営業所としてサテライトオフィスを設立します。
地方に本社をもつ企業の場合、都市部での販路を広げたり情報収集を行ったりできるのがメリットです。
また、都市部に本社がある企業の場合、従業員の営業活動による移動時間の負担やコストの削減が期待できます。

サテライトオフィスのメリット・デメリット

オフィスで働く人たち

さまざまな魅力があるサテライトオフィスですが、実際にはまだまだ問題も山積みです。

メリット

メリット①~地方創生への貢献

地方では、若者の地元離れによって高齢化が進んでおり深刻な問題として捉えられています。
しかし、サテライトオフィスが地方に増えれば、若者が自分の地元で仕事を選ぶ際の選択肢が広がり雇用促進へとつながります。
このことで若者が地元に定着しやすくなり、地域活性化にも貢献できます。

メリット②~ワークライフバランスの向上

移動時間を減らせる分、業務の時間にあてられるので残業時間の削減につながります。
空いた時間はプライベートに活用できるので、ワークライフバランスの向上が期待できます。

メリット③~コストや残業時間の削減

郊外や地方にサテライトオフィスを設ける場合、従業員の交通費やオフィスの家賃が抑えられるのがメリットです。
都市型の場合は、ムダな移動時間を減らせるので残業時間の削減が期待できます。

メリット④~災害時の対策になる

もしも本社が災害の被害にあって業務の継続が難しくなっても、離れた場所にサテライトオフィスを配置していれば業務を続けることができます。
このようなリスクを回避する「BCP対策(事業継続計画)」としてサテライトオフィスを設立する会社も増えています。

デメリット

デメリット①~地方は学ぶ場が少ない

セミナーなどの勉強会は主に都市部で行われることがほとんどなので地方で仕事をしている方は自主的に学びにいかなければなりません。
このことで、本社と地方のサテライトオフィスとの間に知識の格差が生まれてしまいます。

デメリット②~コミュニケーションがとりづらい

本社とのコミュニケーション手段はSkypeやビジネスチャット、電話などになります。
実際に対面で話すわけではないのでコミュニケーションはとりづらいと言えます。

デメリット③~地域との交流が必要

都会の喧騒から離れた、自然豊かな田舎でのんびりと働けるのはとてもステキなことです。
しかし、地域によっては自治体や近隣住民とのコミュニケーションを密にとらなければならないシーンがよくあります。

「郷に入れば郷に従え」という言葉があるように、田舎ならではのルールも存在するので都会育ちの人は億劫になってしまう可能性も考えられます。
田舎にいけばのんびり仕事ができるということも基本的になく、仕事の忙しさは都会とは変わりません。

宮崎県では積極的に誘致

宮崎県庁の外観

各地方自治体はサテライトオフィス誘致の活動を積極的行っており、そのなかでも成功例のひとつとして挙げられるのが宮崎県日南市です。

宮崎県日南市のとある商店街は、人口減少によりほとんどの店が閉業してしまっているいわゆるシャッター商店街状態でした。
しかし、日南市の政策で、この商店街にIT企業の誘致活動を行ったところ1年間で10社以上のサテライトオフィスが設立されたという経緯があります。

少し前までは人の姿が全くみられなかった寂しい商店街も今では少しずつ活気を取り戻し、若者が増えたことから子育て支援センターまでも開設されました。

今後の需要はどうなる?

働き方改革が叫ばれている今、サテライトオフィスは今後も益々需要が高まっていくと予想できます。
しかしながら、少子高齢化の起因もあり、サテライトオフィスを設立した企業は人材確保に苦戦しているというのも現実です。
行政からの支援に頼るだけでなく、企業それぞれの採用努力も問われてくるのではないでしょうか。