ふるさと納税で“損”する都市部~行政サービス低下の声が挙がる

豪華な返礼品が貰えるとして人気の「ふるさと納税」は利用者が年々増加の傾向にあり、ますます注目されています。一方で、都市部の自治体の住民税が減収する実態もみえてきました。本来あるべき「寄付」という趣旨に立ち返り、今一度そのあり方を問いただす時期がきています。

利用者が年々増え続けているふるさと納税

ふるさと納税返礼品の野菜

2008年に始まり、だいぶ世に浸透してきた「ふるさと納税」。
応援したい地方自治体に寄付をする代わりに、所得税・住民税が控除されたり実質負担額2,000円で豪華な特産品が貰えたりすることから人気を集めています。
総務省の調べによると、2008年のスタート時の寄付額は約81億円でしたが、2018年には約5,127億円にまで増えているという結果が出ています。

参考総務省「令和元年度ふるさと納税に関する現況調査について」
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/archive/

このような盛り上がりをみせるなか、都市部から住民税が流出しているとして問題視されている一面があるのです。

ふるさと納税の仕組みとは?

そもそもふるさと納税とは、自分が応援したいと思った市町村に寄付金を払って返礼品を貰う制度のことを指します。
自己負担額2,000円を差し引いた寄付の全額が、所得税・住民税から控除されるので、翌年度の住民税が減るのがメリットです。
ただし、ふるさと納税の寄付上限額は人によって異なり、上限を超えてしまった部分は控除されず自己負担分に加算されるので注意しましょう。

2019年6月に法律が改正された

2019年6月1日にふるさと納税の法律が改正されました。
下記が改正された主な内容です。

・返礼品は地場産品に限る
・返礼割合を3割以下とすること

上記の法改正に至った理由は、“返礼品競争の過熱”にあります。
ふるさと納税の返礼品は地元の特産品を贈るのが普通でしたが、返礼品競争がヒートアップしたことで、地域の特産品とは関係のないAmazonギフト券や旅行券などの高額な返礼品を贈る自治体が現れました。
この現状に対し、地元の特産品で頑張っていた自治体はもちろん不満が高まります。
さらには、本来の趣旨とはそれた返礼品目的での寄付が増加してしまい、本来都市部に入るべき税収が減っているといった指摘も挙がりました。
総務省はこれらの指摘を受け、注意・警告を再三行いましたが、改善がみられなかったため上記の法改正が行われたのです。

ふるさと納税による都市部への打撃

都市部の様子

先述した通り、ふるさと納税は寄付者の住民税が控除されるメリットがあります。
しかし、都市部の自治体はこの控除によって住民税が著しく減収しており「行政のサービス低下につながる」といった声があがっています。
総務省の調べによると、平成30年度のふるさと納税における住民税の控除額は、全国で約2,448億円でした。
都道府県別で住民税の減収トップ3を挙げると、1位が東京都で約645億円、2位が神奈川県で約250億円、3位が大阪府で約211億円です。

そのなかでも神奈川県川崎市の住民税減収が急激に延びており、平成27年度は約2億円だったのに対し、平成29年度には約30億円にまで達しています。
住民税によるマイナス分は、基本的に総務省が現就学の75%分を「地方交付税」で負担することになっていますが、川崎市や一部の都市部にはその補填がありません。
そのため、このまま住民税が減り続けてしまうと行政サービスに影響が出てしまう恐れがあるのです。

賛否が分かれるふるさと納税

ふるさと納税返礼品の蟹

ふるさと納税により、一部の自治体では税収が減るというマイナス面があり、賛否されています。
しかし一方で、ふるさと納税によって潤った地方経済で被災地の復旧や復興に役立てたり、PRとして観光客を勧誘できたりするなど、恩恵を受けている地方自治体の存在もあるのです。
まさに陰と陽の状態ですが、「返礼品で特をする」という視点ではなく本来の「寄付」という形に立ち返り、ふるさと納税で地方がどのように活気づいたのか使い道をもっとみせていくことが重要だと考えます。